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2005年4月号 |
『鼓 腹 撃 壌』 |
中国の古語で、良政が行き届いて安楽な生活を楽しむ様子を「鼓腹撃壌(こふくげきじょう)」と言います。現在、中国沿海部(浙江省、福建省、広州等々)の地域の方々は、かつてない程の経済的繁栄を獲得し、「鼓腹撃壌」を味わっている人も多かろうと想像します。日本もかつて昭和30年、40年代に高度経済成長の時代を経験していますから、想像できる人も多いでしょう。大東亜戦争末期、敗戦直後の経験が記憶にある方は、腹一杯にメシを食えることの喜びがどれ程のものかは、ご想像に易いでしょう。
そこで、中国の話しをされる方に申し上げたいんですが、中国を語る時に忘れちゃならないこと、知っておかなければならないことが、いくつかあると存じます。
中国4000年の大国とか歴史とか言われますが、中国は過去を破壊する国なんじゃありませんか。一つの王朝が終わると、前の王朝の歴史を全部壊してゼロにしようとする。私は、古代中国の帝国は多分、随、唐で終わっているんだと思います。
例えば、中国には仏像がほとんど残っていない。磁器や陶器で前王朝の印が付いていたら全て破壊する。従って、4000年の歴史とか伝統を誇りにする中国人がいたら、そりゃ論旨が矛盾していると言わねばならないかもしれません。加えて今の中国は、伝統を破壊してきた共産主義国家ということでして、特に文化大革命で、歴史書物を含めて、過去を全て根こそぎ破壊したことを思い出して下さい。
本居宣長という学者(18世紀末)も指摘しています。「中国という国は、自ら道徳を唱えるが、自らの歴史は、乱れに乱れた歴史しか作れていないではないか。革命が時間をおいて必ず起こり、王朝は繰り返し惨落し、乱徒が王位に就くことを積み重ねて来、そこに一片の道義もないではないか。」と手厳しく断じています。
よく考えてみると、日本の古代史というのは、年代的に見るとヨーロッパの中世史と大体同じ頃です。ご存知かと思いますが、ヨーロッパには古代史はありません。ギリシャ文明とかローマの遺跡といった話しを聞いた人もおられるとは存じますが、ギリシャ・ローマとヨーロッパは連なっていないんです。ギリシャ・ローマ時代から今のヨーロッパに移行するまでの間、約1000年、地中海は完全にアラブ人の世界だったのが歴史です。つまりギリシャ・ローマの古代帝国が崩壊して、アラブ支配が1000年間ぐらいあり、その後やっと、(現在の)フランス、イタリア、ドイツといわれるものの原型が出てきたのは、12世紀以降なんです。
十字軍の話しもこの頃以降の話しで、日本で言えば鎌倉時代辺りになるでしょう。
しかし、日本では少なくとも大化の改新以降、歴史の断絶はありません。確かに、大化の改新、鎌倉幕府、明治維新、大東亜戦争等、これまで国体を揺るがすような騒ぎがありましたが、皇室は連綿として125代続き、神話としても多く残っているのが日本の歴史なんです。
色々と歴史の流れについて書きましたが、古代中国は遣隋使の例を見るまでもなく、我々の先進文化の源とも言うべきものがあると私も思います。しかし、現代のギリシャ人が古代のギリシャ人と関係がないように、現代中国と古代中国とはあまり関係ないということです。
実は、清朝も満州族、モンゴル帝国はもちろんモンゴル人等、唐の時代が終わって国が乱れに乱れた以降、漢民族が支配したのは、明と今の中国くらいで、後は他民族支配だったんじゃありませんか。
どんな発展途上であっても、最初は独裁の方が開発を進めやすい・・・とよく言われます。しかし、永久には続かないんです。国民は「鼓腹撃壌」になれば必ず腹いっぱいだけじゃ収まらなくなるのというのは、世界中みんな同じ道をたどったてきたんじゃありませんか。行くつく先は、国民の投票による政権選択が起きるということです。
抗日は、中国八路軍の誇りであり、中国共産党の鉄則でもあり、一種の原理原則なんです。しかしケ小平以来、中国共産党は国内市場を開放し、国営企業は淘汰されるにまかせた。つまり現実は、売国と煽った中国国民党と同じではないかと。
ここの点を鋭くついて、中国の若者達は自己主張を強化しているんです。天安門事件の時、北京で100万人単位の暴動が起きましたが、情報非公開によって共産党は命を長らえたのです。しかし現在、その状況は3億台の携帯電話普及により「情報の自由」が手に入り大変化しているんです。
次に欲するのは「政権選択の自由」だと、私は確信します。
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