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2007年12月号 |
『 大 連 立』 |
このところの新聞の政治話題は「大連立」という名の「政界再編」騒ぎです。これは7月の参議院選挙での自民党大敗の頃から、いろいろの場面で同業者間では噂になっていた話題の一つでした。しかし現実としてはなかなか難しい問題を抱えており、その第一は何といっても選挙制度です。
ご存知のように細川内閣当時に、小沢一郎氏の発想で中選挙区から一選挙区一人の小選挙区制に変更され、これまですでに4回の総選挙が行なわれています。目的は政権交代可能な二大政党制を作るということでした。現実に多くの選挙区で自民、民主党の両候補が一対一で戦ってきております。その当事者が「大連立」になったとしたら、次の選挙をどう戦うのでしょうか。選挙は選挙として戦い、政策は政策として割り切り、院内では同一会派に所属して政治行動を共にするという状況は私の想像力を超えます。現在、衆議院では自民党が最大会派、参議院では民主党が第一会派。衆参の勢力が異なるため法案審議はままならず、法案は成立しないか、妥協につぐ妥協を重ねなければならなくなり、重要法案に迅速性を求めてもなかなか成立しにくい状況です。
事実、この稿を書いている現在、この国会で成立した法案は一つしかありません。こんな事態は選良たるべき国会議員として大いに憂うべきであることは間違いありませんが、自民党だけが唯一責任を感じて打開の努力してもどうにもなりません。参議院では第一党の民主党が議長も議院運営委員会委員長の職もとっているのですから、その責任も当然とるべきであることは自明でしょう。
法案一つ一つを丁寧に審議し、修正すべきは修正し、妥協や修正が成立しなければ廃案にし、その責任はお互い分かち合わなければならないのが今の現実ではないでしょうか。時間の浪費とか、生産性が悪いとかのご批判も出るでしょう。しかしこれが選挙の結果、即ち有権者が選択した現実なんだと理解し、それに対応して行くのが議員の仕事ではないでしょうか。
確かに、壮大で非効率的な時間を費やさざるを得なくなることも予想されます。しかしそれは有権者が選択した現実だとして受け入れるのが、民主主義のルールなんじゃありませんか。迅速さを要求される現下の国際情勢で、国益を損なうであろうことは容易に理解できます。
だからといって「大連立」が政党間で成立したと言っても、有権者が納得するとはとても思えません。公明党や他の野党の存在は極めて希薄となり、批判勢力の発言も陰の薄いものになると思われます。批判のない議会は大政翼賛会でわれわれは過去に経験したのではありませんか。 その結果がどうであったかは、皆さんが経験済み、もしくは教科書で習われたとおりです。
やはりこういう事態に初めて直面した日本の議会としては、成熟した民主主義国家として、無闇に焦って結論を出すべきではないと存じます。与党も野党も新しい事態にいかに対応するか、大いに悩み、苦しみ抜いて答えを出す・・・。それが、日本がさらに成熟した民主主義国家になって行くための試練なんだと存じます。
お互いに責任をなすり合い、つっぱり合って非生産的な時間を費やし、結果、予算が成立せず、暫定予算になったりするかも知れません。予算関連法案が通らず、歳入欠陥が起きることも予想の範疇でしょう。思い返せば細川内閣の時も、小選挙区制導入の政治改革を優先し、予算の成立が7月にずれこんだことがありました。その結果、経済政策が大幅に遅れて大不況に突入した歴史があります。その経験を踏まえての今回の選挙結果だとすれば、有権者もその責任を認識して戴かねばならないんじゃありませんか。
大連立が成立しているドイツの議会は、日本のような小選挙区制を採っておらず、比例代表制を主とする選挙制度です。アメリカとイギリスは小選挙区制で政権交代が行われていますが、大連立はありません。アメリカ上院が野党に過半数を握られているのも特別な状態ではありません。従って、政権交代可能な状況作りのために小選挙区制を採ったのなら、思想信条を異にする議員が同一政党に居るのを改めて、政界再編を優先した方が現実的で、何よりも、有権者の方々にとっても無用な混乱を避けられるのではないでしょうか。
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