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講演・論文
2007年2月23日 「日本は拉致で孤立」は事実誤認

 北朝鮮の核問題をめぐって行われた6者会合。@北朝鮮は核放棄の初期段階として寧辺の核施設を停止、封印し、IAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れるA初期段階実施で重油5万d相当を支援、核施設の無能力化など次段階の実施で最大で95万d相当を支援B日米は北朝鮮と直接協議を開始C日朝関係など5分野の作業部会を設置し30日以内に開催する―などといった共同文書が採択されたのは、皆さんすでにご存じのとおりです。
  そこで、今回はこの6者会合におけるポイントをいくつか指摘してみたいと思います。
  まず、その評価ですが、日本や米国、中国、ロシア、韓国といった5カ国共通の思いである「北朝鮮が核保有国になることを認めない」という点については、それなりの成果をあげたものと思っています。もちろん、今後行われる作業部会等での北朝鮮側の出方をしっかりと見極めていかねばなりませんが、5カ国が足並みをそろえて北朝鮮と交渉ができた点も大きな収穫でした。
  次に「米国は日本を蚊帳の外において北朝鮮と交渉していた」、「日本は拉致という特殊事情があるため孤立する」といった報道などがありましたが、これはまったく違うと断言できます。
  例えば、6者会合が開催される契機となった米国のヒル国務次官補と北朝鮮のY金桂寛外務次官による米朝会談。1月半ばにドイツのベルリンで行われたものですが、ここで米国側と北朝鮮側が話し合った内容については、日本も把握しておりました。外交機密にかかわることでもあり、手の内を明らかにはできませんが、要するに、日米が緊密に連絡をとりあった上で、米朝協議が行われたというのが事実なのです。
  また、6者会合の中で日本側は「こちらは拉致問題を抱えており、これに進展がない限り金は出せない」と主張してきましたが、これにも4カ国は深い理解を示してくれました。結局、孤立していたのは北朝鮮であって、日本が孤立していたというのはまったくの事実誤認と言っていいのではないでしょうか。
  だって、考えてみてください。北朝鮮が経済発展していくためには日本の協力は欠かせないところです。それは米国はもちろん、中国や韓国、ロシアだってそう認識しているはずです。
  だから、各国が北朝鮮に対して「北朝鮮の経済発展のためには日本の協力が必要だ。だから、日本とはそこそこうまく付き合っていかないとダメだ」というプレッシャーを掛けていくことは、極めて有効なことでしょう。
  拉致、核、ミサイル問題の解決を目指し、これまで安倍内閣は北朝鮮に対して毅然とした経済制裁を行ってきました。この路線は極めて正しいと思っております。
  自民党議員の中にも「制裁よりも対話をしなくてどうする」と主張する向きもあるようですが、まず大事なのは北朝鮮が真実を明らかにして真摯に話し合いを行う姿勢を持つこと。そうすれば、我々としてもきちんと話し合いを行っていく用意はあります。
  その点でも、先の6者会合で決まった日朝国交正常化作業部会での北朝鮮側の出方が注目されるところです。  

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