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講演・論文
2007年5月25日 景気回復を実感するために

   先週末のことですが、アジア経済人会議において「グローバル経営と日本外交の使命」と題した基調講演を行ってきました。簡単に言えば、日本外交は間接的ながら世界経済の発展に大きく寄与しており、それが回り回って日本も多大な恩恵を受けている。ODAなどしかり、今後も民間にできない部分でそうした経済外交を進めていかねばならない、といったものです。詳しくは外務省のHPにアップされておりますので、ご覧になっていただければ幸いです。
 さて、これだけ世界経済の発展に貢献している日本ですが、足下の国内状況はどうでしょうか。企業の3月期決算や統計資料などで見る限り、わが国の景気は長期の回復軌道にのっているとみて間違いないでしょう。なんせ、戦後の最長記録を誇っていた「イザナギ景気」(57カ月)を抜いているぐらいですから。
 しかし、サラリーマンをはじめ多くの方々が景気回復を実感しているかと言えば、まだまだというのが実情でしょう。実際、私の周りの新聞記者などからも「景気が回復したと言っているが実感できない。だいたい、給料があがらない」とボヤく声が聞こえてきます。
 なぜ、これほど認識にギャップがでるのか、一番大きな原因は景気感にあるんじゃないでしょうか。例えば、給料が10%上がっても物価が15%上がれば、可処分所得は5%のダウンとなります。逆に給料が上がらなくても、物価が下がれば可処分所得は増えているわけです。しかし、ここが人間心理の不思議なところで、可処分所得が増えても給料が上がらなければ、景気感はあがらないもんです。なんとなく奥さんに対してもカッコ悪いですしね。
 では、どうしたら景気感があがっていくか。それには政府が積極的に地域間格差などを解消する施策を行っていくことが不可欠です。政治家がしっかりとしたビジョンの基に未来を語り、企業が安心して設備投資や労働分配率の改善などが行えるよう、"先行き"が良くなるという自信を持たせることが肝要ではないでしょうか。
 日本人はとてつもない力があるにもかかわらず、なぜか悲観論に過敏に反応しやすいところがあります。それは政治家はもとより、マスコミなどにも責任があると思いますが、特に経済分野において顕著に表れています。
 例えば、ちょっと円高になると、すぐに「輸出に影響が出て景気にかげりが出る」といった解説がまかり通るようですが、1980年代に円高不況なんて言葉がありましたが、円高は結果的にバブルを招いたかもしれませんが、不況は招かなかったじゃないですか。
 ましてや、最近の日本の輸出の多くは消費財から資本財や生産財と言われる商品に変わっていますし、資源の輸入という面では円高の方がメリットがあります。また、最近は外資によるM&Aが活発に行われているようですが、対抗しようとする企業にとっては円高の方が良いという側面だってあるんじゃないですか。
 要するに大小の違いはあれ、物事にはプラスとマイナスの側面があるわけで、慢心は慎まねばなりませんが、プラス面を意識しながらチャレンジしていく事が極めて大切なんだと思います。もちろん、そのための環境づくりはわれわれ政治家の大きな仕事の一つですが。
 

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