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講演・論文
2008年4月18日 『「日中共益」 へ堂々と主張を 』  

   チベットに対する中国政府の姿勢に抗議するため、世界各地で異様な聖火リレーが続いています。妨害が相次いだロンドンを皮切りに、パリでは3度も聖火が消えたほか、サンフランシスコでは突然、ルート変更が行われました。26日には長野で聖火リレーが行われますが、中国に対する世界の視線は一段と厳しくなっており、EU(欧州連合)の欧州議会は加盟国首脳の北京五輪開会式への不参加を検討すべきだとの決議を採択。すでに欠席の意向を示している英国のブラウン首相をはじめ、その他の首脳や要人なども中国の動向を見極めて判断する姿勢を示している方が多いようです。
 人権抑圧という最も大きな問題を含んでいるがゆえに、センシティブな問題になっているわけですが、元五輪選手としての気持ちも含めて言えば、開会式の出席見送りは別として、五輪自体が中止なるような事態だけは避けるべきだと思っております。
 もちろん、日本政府としては中国政府に対し、人権への配慮を欠いた高圧的な姿勢を一刻も早く改めるよう促すとともに、「問題解決のためにダライ・ラマ14世と対話すべきだ」と強く訴えていかねばなりません。
 中国が経済成長していくことは素晴らしいことだと心底思っていますが、それに伴いさまざまな問題も出てきています。例えば、過去20年間にわたり軍事費を2ケタ台も増やし続けていることは、隣国にとって脅威の対象になりつつあります。もはや中国に攻め入る国が現実問題として見えないにもかからず、軍事費を大幅に増やし、その中身をはっきりとみせないことは、中国の覇権主義とも受け取られかねません。
 来月上旬には胡錦濤国家主席が来日しますが、先の毒ギョーザ事件や東シナ海のガス田問題など緊急の懸案課題についてはもちろん、チベットやこうした問題についても堂々と日本側の主張を展開していくべきでしょう。
 「日中友好」というお題目のために、お互いに遠慮して黙っていたりするような関係では本当の意味での進展は生まれません。政治という枠組みの中で言えば、今後、日本としては「日中共益」をスローガンに中国と共に歩んでいくべきなのであって、日中友好はその手段であって目的じゃあありません。
 もちろん、中国の人たちに正しく日本を理解してもらう事も必要で、私は外相時代、5年にわたって中国の学生9000人を招くプロジェクトを計画し、現在、実行されています。すでに来日した留学生たちからは「日本は軍国主義化していると聞いていたが、滞在中、軍服を着た人に1人も会わなかった」「なんで日本の公衆トイレはこんなにきれいなんだろう」といった率直な感想が寄せられていますが、まさに百聞は一見にしかずと言ったところでしょう。 
 

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